健康への投資が企業の未来を変えることができる

健康経営とは、従業員の健康管理を経営課題とし、戦略的に取り組む経営手法のことです。

これはアメリカの臨床心理学者であるロバート・H・ローゼン(Robert H. Rosen)博士の著書の『The Health Company』に基づいた経営方針です。

これまで別々ものとされていた「経営管理」と「健康管理」を統合的に捉え、個人の健康増進を行うことで、企業の業績向上へとつなげるという考え方です。

企業は従業員の健康を増進することで、医療費を削減できるだけでなく、生産性の低下の防止や企業の収益性向上など、さまざまな効果が期待できます。企業の利益追求と働く人の心身の健康維持を両立することが、従業員個人の生活の質の向上のみならず、企業活力を高めることにつながることになります。

健康投資を考えるにあたってのポイント

 1. 従業員の健康に対するライフスタイルへの影響
 2. 従業員の健康に対する労働環境への影響
 3. 組織の収益性に対する従業員の健康度への影響
 4. 従業員の健康と組織の利益に対する家族、同僚、余暇などへの影響

従業員の健康を重要な経営資源として捉え、健康づくりの推進を「コスト」ではなく「将来への投資」と捉える前向きな考え方に企業の関心が高まっています。

参考文献:『ヘルシー・カンパニー―人的資源の活用とストレス管理』(ロバート・H. ローゼン (著)、 宗像 恒次 (翻訳)、産能大学出版部、1994年)ロバート・H・ローゼン(Robert H. Rosen)

健康に投資することでのリターン

健康経営は、不健康な経営によって起こる会社と従業員の健康負債となる 負のスパイラル を断ち切り、健全な健康経営となる 正のスパイラル へと転換させることが最大の目的になります。

人は、不健康になるとモチベーションや集中力が大幅に低下し、ケアレスミスを頻発し、重大なインシデント事故に遭遇することになります。また、体調不良による遅刻や早退、欠勤が増え、従業員一人当たりの負担が増加し、疲弊した退職、さらに従業員の負担が増加、そして医療費負担や採用・育成コストが増加することになり、経営コスト圧迫を起こしてしまいます。
このような状態が慢性化することによって、業績は大幅に悪化、企業イメージは低下、企業収益が減少し、健康投資を行う余裕がないまま負のスパイラルが続いていますことになります。

健康維持促進プログラムやワークライフバランス支援など戦略的に行うことは、1ドルの健康投資に対して約3ドルの投資リターンを得ることができると言われています。

健康経営は、従業員には心身ともに健康な状態で働くことのできる環境を作り、企業には健康投資によって大きなリターンを得られることができます企業と従業員の相互に利益が得られる関係が、健康経営における目標になるということになります。

トータル・ヘルスプロモーション・プラン

従業員のための「心と体の健康プラン」は、個人の食事(栄養)睡眠運動などの生活習慣を見直すところから考え、継続が可能な計画を立てて、健康づくりをすすめることを上げています。従業員の心と体の健康増進を目標にしています。

  • ストレスに対する援助
  • リラクセーション方法の提案
  • 良好な職場の雰囲気づくり
  • 食生活、食行動の評価と改善提案
  • 生活状況調査(仕事の内容、運動歴、睡眠、運動量、嗜好品など)
  • 運動機能評価(粗大筋力、 柔軟性、バランス、運動量)
  • これらの調査・評価より、運動プログラムの作成、運動提案の実施

健康経営優良法人認定制度について

健康経営にか変わる各種顕彰制度であり、優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」し、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業」として社会的に評価をされる制度で、2015年度から開始されたものです。

健康経営銘柄
経済産業省は、東京証券取引所と共同で、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業のことを“健康経営銘柄”として選出、公表しています。その判断基準は主に以下の通りです。

・健康経営が経営理念・方針に位置づけられているか
・健康経営に取り組むための組織体制が構築されているか
・健康経営に取り組むための制度があり、施策が実行されているか
・健康経営の取り組みを評価し、改善に取り組んでいるか
・法令を遵守しているか

これらを満たして企業が健康経営銘柄として認定、公表されることで、投資家や従業員といったステークホルダーから適切に評価されやすくすることを目的としています。

 

健康経営優良法人の認定基準は

 ・経営理念

 ・組織体制

 ・制度/施策実行

 ・評価/改善

 ・法令遵守/リスクマネジメント

の5つの大項目があり、実施が必須であるものと、何項目か以上実施していることが条件になっている項目があります。 また、大規模部門、中小規模部門でそれぞれ基準が異なります。